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「トロイ戦争は起こらないだろう」観劇 [劇団四季]



観てきました。
千秋楽前日の滑り込み観劇。

ズシリと重く心に響く物語です。

 

「トロイ戦争」の物語は余りにも有名な物語で…。

でもその中でさらりと流される部分にスポットを当てた芝居でした。

戦争を起こさないと、必死に努力するエクトール。

彼と彼の妻アンドロマックが口にする
「トロイ戦争は起こらないだろう。」
と言うセリフは、実際の結膜を知っている観客には悲しく響きます。

彼らがどんなに力を尽くそうと、戦争は起こってしまうのだから。

「戦争と言うものが人間を平等にする、もっとも下劣な、もっとも偽善に満ちた行いだということを。」

戦争で領土を拡大するのが当たり前だった時代、平和は毒だと口々に叫ぶ人々の中で、彼らは余りにも少数派。
その言っていることが、どんなに正しく、どんなに冷静でも、それが人々に受け入れられることはないのです。

思えば、世界のどのような戦争も、そうであるのかもしれません。
国の重要な位置に立つ人全てが、戦争を肯定するわけではない…。
でも絶対的多数の前に、彼らの努力はいつも無にされてきたのでしょう。

「人や物の中から、こうした運命の人質を見分けること、人生で難しいのはこれなのだ。
君たちはそれを見分けそこなった。」

たった一人の女を浚ったことで起こった戦争。
ギリシャの勇者ユリスの言葉は、現代の私たちの胸にも重く響きます。


ギリシャ神話ではカッサンドルだけが予知の力を持っていますが、この舞台は事件の当事者の一人エレーヌも戦争の有様を予言する…。
余りに無邪気で快楽主義者に見える彼女の言動に、時々見え隠れする魔性の影。
全ての元凶の二面性が、この話の真実を語っているようです。

しかしもう一人の当事者のパリスの投げやりでおバカなこと…。
いや、この題材では映画でも何でも、彼はそういう役割なのですが[たらーっ(汗)]
いくら好きな役者が演じていても、…どうしても好きになれないキャラクターですね。

「トロイ戦争は起こらないだろう」
…全ての戦争の前、人民はこのようなセリフを口にするのかも知れません。
後に来る悲劇など予想もしないで。
でも、悲劇はやってくる。何回も繰り返し繰り返し。
それを証拠に、未だに世界のどこかで戦争は起こっています。


人間の愚かさ、卑劣さを描いたこの舞台。
強く考えさせられるところが多く有りました。
少なくとも、現実が見えなくなり戦いに邁進する多数派にはならないように。
それを強くメッセージとして呼びかけられている、そんな気がします。

 

<CAST>
アンドロマック  坂本 里咲
エレーヌ      野村 玲子
エキュブ      斉藤 昭子
カッサンドル   都築 香弥子
平和の女神   西田 ゆりあ
虹の女神     岡本 結花
ポリクセーヌ   川良 美由紀
エクトール    阿久津 陽一郎
ユリス      味方 隆司
プリアム     山口 嘉三
デモコス     栗原 英雄
パリス      田邊 真也
オイアクス    青羽 剛
ビュジリス    池田 英治
幾何学者    畠山 典之
トロイリュス   大空 卓鵬
水夫・伝令・兵士たち
          岡本 繁治  高島 啓吾  高草 量平  関 隆宏  
          北山 雄一郎  渡久山 慶  名児耶 洋
トロイの女たち
         千村 璃永  藤井さやか


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コメント 2

ミカリン

>むちゃさん
nice!ありがとうございます。

>菖蒲(あやめ)さん
nice!ありがとうございます。

by ミカリン (2009-04-05 23:12) 

ミカリン

>MIYABIさん
nice!ありがとうございます。
by ミカリン (2009-04-07 00:41) 

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