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「ジーザス・クライスト=スーパースター」ジャポネスク・バージョン [劇団四季]



初のジャポネスク・バージョンです。

なにより「ジーザス・クライスト=スーパースター」自体、久しぶり。
楽しみに出かけました。

 


まず、劇場に入って吃驚しました。
茶色い荒野が広がっていたエルサレムバージョンと違い、舞台は真っ白。
横に2本、ツタの絡まる木があるだけ…。
それに前から2列目と言う位置から見る舞台は、物が突進してこちらに落ちてくるのではないかと思えるほどの迫力の急傾斜。

そして様々な角度で色々な役割をする大八車…。ラストに出てくる十字架を含め、大道具はこれだけと言っても過言では有りません。
それを動かすのは黒子ならぬ「白子」。こんなところにも別名「歌舞伎バージョン」の影響が(笑)。
そして随所に和楽器の音色。雅楽や尺八、三味線などの音色がロックを奏でるのは聴いていて楽しくもあります。

ジーザス役の金田さんは今回初めて観ましたが、声が素晴らしい!
音域の広いジーザスの歌をしっかり歌われていました。
それに身長が高ーい!!

舞台やライブを20年見続けての私なりの持論なんですが、舞台で1番最初に人の目を引き付けるのは
1に身長、2にスタイル、3は声。
3は私が声フェチだからかも…(笑)。
そりゃ持って生まれた「スター」と言うオーラを放って、人を魅了する役者さんはいますが、それは一握りの方々。
舞台の場合、特に舞台メークが濃いですからね。それにいつも前の席で見る訳ではないから、顔は良いに越したことはないけれど、身長・スタイルよりは3番手や4番手に回ってしまいます。
もちろん、ミュージカルに必要なのは演技力・歌唱力・ダンス力ですが。

ユダ役の金森さんは悪くないけれど、ちょっとジーザスと比べると押され気味。
裏の主役の分、少々残念。
以前観たユダ役が、沢木さん・芝さんだったので比べるのは酷かも知れませんが…。
このお二人が強烈な印象だっただけに、やっぱり悲しい人間の性で比べてしまいます。

さて本篇ですが、これは、エルサレム版と同じく、ジーザス&ユダの苦悩が強く打ち出され、民衆の無責任さ、ジーザスが捕まるまで真実にいきつけない、お気楽なぐらいの11弟子の姿が描かれます。
病人を治し、奇跡を起こすジーザスを持て囃し熱狂して祀りあげ、権力者に睨まれ自分たちの想像した「救い主像」とは違うと知ったとたん、手のひらを返したように彼を罵る民衆の姿は、あたかも人気絶頂の芸能人に熱狂し、人気が落ちると関心を失って見向きもしない現代の一般人たちに重なります。
いつの時代も人間とはそういうものかも知れません。
長い物に巻かれ、真実よりも風潮や噂を信じる、そんな浅ましい群衆という姿。

有る意味、ユダは何よりも現実が見えていたのでしょう。
だからこそ、道を踏み外してしまう…。そんな彼が悲しく浮かびあがります。
頭がよく現実主義だったからこそ、使徒とはなり切れなかったのかもしれません。
なにより「彼の裏切り」がなければ「十字架」「復活」も無い訳ですから、彼が裏切り者と言われるのは、哀れな気持ちもします。
幼稚園、中学、高校とミッションスクールに通い、社会人になってからもしばらくは教会に通いながら、私に有った一つの疑問でもありますが、共通の思いを持つ人がいるからこそ、この舞台の
「マイゴット 私は貴方に利用されたのだ
マイゴット 貴方は何故私を選ばれた
何故だ 何故だ 何故だ 何故だ 何故だ…」
の自殺直前の台詞が存在しているのだと思います。
彼の裏切りは最初から予言されていた。彼はキリストを裏切るために生まれてきたのでしょうか?
それでは余りにも悲しすぎます。

今回のジャポネスク・バージョンではシモンが真っ赤な衣装を着けています。
敵役に赤の入った衣装を着けている者はいても、使徒や民衆側では彼だけ。
それだけに彼が目立って見えました。
さすが「熱心党のシモン」(ペテロの本名がシモンなので区別するための呼び名)。
変わって「シモン・ペテロ」の方は、地味な格好。
1番弟子にも関わらず、弟子の中では1番若いぐらいの熱心党のシモンにキャスト表の順位で負けてしまうだけのことは…。いえいえ、悪意は有りませんよ(笑)。
熱心党のシモン役の歴代の役者さんは大きく育った人が多いですからね~。
なかなか注目かもしれません。

さて、一番お笑いなのはヘロデ王。
最初に作られた映画からして、笑い(むしろ失笑)担当だったので、彼の登場には期待しておりました。

真っ白に塗られて、ゴテゴテと飾られた人力車に乗り、侍(片肌脱ぎで刺青有り)の姿で登場した時に思わず噴き出したのは私です。
歌舞伎のように見得を切り、花魁を二人はべらせ…。暗い話のはずが、このシーンだけは異色なんですよね~、いつも。
何となく観客に一息つかせる…そんな役割を背負っているのかもしれません。
もうちょっとイっちゃってる方が、私好みかなぁ。
最初に観たのが下村さんだから、余計かもしれません。

最後の「スーパースター」のシーン。
エルサレム版では舞台横の方にゴテゴテの服を着たユダが登場しますが、今回は上からの登場。
格好はシンプルですが、映画版の空から真っ白な衣装で降りてきた黒人さんユダが頭に浮かびました。
十字架上のジーザスに被せられる茨の冠を投げるのがユダだったのも、ちょっとビックリ。

最後の十字架のシーンはシンプルながら、胸に迫るものがあります。
信者ではないにせよ、何らかの形でキリスト教に関わったことがあるので余計でしょうか?
ある種の神々しさを持って十字架は舞台後方にそびえたつ…そうしてむしろ今までのロックの音楽が消え、音楽も静かなものへと変わっていきます。

ジーザスの十字架上の台詞は聖書ではあまりに有名な物。
観客にはどのような響きを持って、伝わったのでしょう…。

私達は間違いなく、群衆の一人、または彼を知らないと言ったペテロ…。
マグダラのマリアの様に、最後までジーザスについていく強さは持ち合わせていないでしょう。
そんな人間の弱さ、悲しさを浮き彫りにした作品だと思います。

また来月初めに観に行きます。
2度目のジャポネスク・バージョンで気づく部分も多く有るでしょう。
今からその日が楽しみです。


<本日のキャスト>
ジーザス・クライスト  金田 俊秀
イスカリオテのユダ  金森 勝
マグダラのマリア    高木 美香
カヤパ          金本 和起
アンナス        古賀陶馬ワイス
司祭           阿川 建一郎
              伊藤 潤一郎
              佐藤 圭一
シモン          本城 裕二
ペテロ          飯田 達郎
ピラト          青井 緑平
ヘロデ王        星野 光一
男性アンサンブル
             赤瀬 賢二  上出 匡  染谷 裕
             武智 正光  中村 伝  藤山 大祐
             川畑 亮  嶋野 達也  小野 功司
             ソ ジョンス  神山 隼  山本 伸夫
             松田 逸平  玉真 義雄
女性アンサンブル
             石倉 康子  ソン インミ  光川 愛
             伊藤 志保  稲垣 麻衣子  小島 由夏
             上條 奈々  濱村 圭子  宝生 慧
             キム ミンヨン  ジョン ジヨン  松尾 千歳


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コメント 2

ミカリン

>vivianさん
nice!ありがとうございます。

>MIYABIさん
nice!ありがとうございます。

>エイジさん
nice!ありがとうございます。

>La_vbl_kokさん
nice!ありがとうございます。



by ミカリン (2009-04-19 21:48) 

ミカリン

>ミュウさん
nice!ありがとうございます。
by ミカリン (2009-04-20 22:13) 

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