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ミュージカル「南十字星」 [劇団四季]

劇団四季 ミュージカル 南十字星 [DVD]

劇団四季 ミュージカル 南十字星 [DVD]

  • 出版社/メーカー: NHKエンタープライズ
  • メディア: DVD

先月の終り頃TVで放送していました。
もちろん生でも観劇したことがありますが…。

BC級戦犯の話題が続きますが、ご容赦。
前回、書いたように彼らBC級戦犯の存在に関心を持つようになった、切っ掛けの舞台です。

 

この物語の主人公、保科勲は前述の「私は貝になりたい」の清水豊松と違い、インドネシアの地でオランダによって裁かれました。

二人に共通することは、無実の罪で絞首刑に処せられたこと。
同じような題材の作品が複数存在するということは、この時代に彼らのように命を落としていった人々がいかに多かったかを示していると思います。

彼らBC級戦犯の多くは何を思って、十三階段を昇って行ったのでしょうか?
そして絞首刑を免れた戦犯たちは、何を思ってその後の時代を生きたのでしょうか?

これだけ時代が経ってしまった今となっては、数少ない資料から想像するしか方法がないのが事実です。
それでも前回、述べたことの繰り返しになりますが、彼らの存在を忘れないこと、繰り返さないよう自分に出来る何かを探すことが、今の私たちの勤めではないでしょうか?


勲はインドネシアの地で、捕虜にも平等に接し、誰に対しても優しさを持っていました。
しかし、捕虜虐待など様々な事件の場に居合わせたことで、無実の罪を着せられ、死刑台の露と消えます。
卑怯な義兄の罪を被り、真実を語ることもないまま…。

貧乏に生まれ、ろくに学もなかったせいで、その日を生きるのが精いっぱいだった「私は貝になりたい」の清水豊松と違い、有る程度余裕のある家庭に育ち、当時としては少数派である大学まで通った勲には、豊松よりもいろいろな物が見えていたのかもしれません。

「何故、自分が?」と思ったことがあるのは同じ。
でも「自分が死ぬ事で、少しでも日本に対する報復感情が薄れるなら…。」と静かに十三階段を昇っていく勲の姿は、最後にうつろな状態で死刑に処せられる豊松の姿と違うにも関わらず、同じ悲しみと理不尽さを感じるのは否めません。

「どんな人にも 優しくした その貴方がなぜ 罪をかぶるの」
恋人のリナの叫びはあまりに悲しい。

「遥か彼方 祖国よわれらを思え この悲しみを 決して忘れずに」
戦犯に処せられた兵士たちの思いは、あまりにも切ない。

最後に勲は私たち観客に語りかけます。
「明日の日本の若者たちよ。戦争の中に生きた若者からの言葉を聞いて欲しい。
歴史の大きな転換期には、名も無い無数の人びとが犠牲になる。その小さな小さな死の積み重ねが世界の歴史を進めてきたことを、今、私は実感している。
戦火を生き延びた命をここで失うのは悲しい。が、この無価値の価値を信じて、私は未来の為に死んでゆく。
日本の変革はおそらく劇的に進むだろう。その発展の物語が私の死後に始まり、成果を見届けられないのは残念だが……たとえこの身は滅んでも、私の代わりに新たな役割を担ってくれる明日の若者たちに未来は託せると信じている。
明日は君たちのものだ。五十年後、百年後の日本を、未来の若者たちよ、よろしく頼む!」

この言葉を私たちは胸を張って聞けるでしょうか。
私は聞けません。

ごめんなさい。貴方達の死を未来の若者たちは意味あるものに出来ていません。

日本全体が背負うべき物を、一介の兵士であった貴方達に押し付け、確かに日本は劇的に発展しました。
その後、自由を履き違え、権利を履き違え、日本は昔に何かを置いてきたような気がします。

それを気付かせるために、彼らの物語は語り継がれなくてはならないのではないでしょうか?

少しでも、彼らに報いるために。少しでも彼らの魂が安らげる世界が訪れるように。

今はただ祈るだけですが、何かその方法が見つかるように、せめて語り継ぐことだけは忘れずにいたいと思います。

ただ切なくて…。
ただ悲しくて…。
胸が痛くて涙が止まらない…。


 


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